はじめに
第3記事では、親族内承継についてお話ししました。
しかし、実際に建設会社の社長とお話をすると、
「息子は会社員になった」
「娘は嫁いで地元にはいない」
「社員も高齢になってきた」
「だから、うちの会社は俺の代で終わりよ」
そんな言葉を本当によく耳にします。
私も以前は、後継者がいなければ廃業するしかないと思っていました。
しかし、事業承継について学ぶ中で気付いたことがあります。
会社を未来へつなぐ方法は、親族内承継だけではないということです。
今回は、後継者がいない建設会社でも選ぶことのできる事業承継について、一緒に考えてみたいと思います。
後継者がいない会社は決して少なくありません
建設業界では高齢化が進み、多くの会社が後継者不足という課題を抱えています。
社長からは、
「息子は都会で会社員をしている」
「子どもは家業に興味がない」
「継がせたいと思える社員がいない」
「こんな苦労を子どもにはさせたくない」
そんな本音を聞くことも少なくありません。
長年苦労してきた社長だからこそ、
「自分と同じ思いはさせたくない」
そう考える気持ちもよく分かります。
ですから、後継者がいないことを悩んでいるのは、決して自分の会社だけではありません。
今、多くの建設会社が同じ課題に向き合っています。
「廃業しよう」と決める前に考えてほしいこと
社長は、「もう終わりにしよう」そう考えるかもしれません。
しかし、本当に会社と一緒に終わってしまうのは建物や設備だけでしょうか。
会社には、
- 長年築いてきたお客様との信頼
- 地域で積み重ねてきた信用
- 社員が身につけた技術
- 協力会社とのつながり
- 建設業許可
- 地域社会との関係
など、目には見えない大切な財産があります。
これらは、一年や二年で築けるものではありません。
何十年という時間をかけ、失敗を重ね、家族を支えながら積み上げてきた社長の人生そのものです。
先代から受け継いだ会社であれば、その歴史はさらに長くなります。
だから私は、会社がなくなることよりも、その財産まで失われてしまうことの方が、ずっと大きな損失だと感じています。
どうか最後まで、事業承継を諦めないでください。
親族以外へ引き継ぐという選択肢もあります
社員承継
建設業では、長年一緒に働いてきた社員へ会社を引き継ぐ「社員承継」という方法があります。
現場を知り、お客様を知り、社長の考え方も理解している社員であれば、大きな安心感があります。
もちろん、新しく社長になる人には大きな責任と覚悟が必要です。
しかし、現社長も体が動く間は相談役として支えることができます。
突然バトンを渡すのではなく、数年かけて少しずつ経営を任せていくことで、社員も取引先も安心して承継を受け入れられるでしょう。
M&Aという方法
最近では、小規模な建設会社でもM&Aという方法を選ぶケースが増えています。
「会社を売る」という言葉だけを聞くと抵抗を感じる方も多いでしょう。
しかし、本来の目的は会社をなくさず、未来へ残すことです。
一方で、買い手にはそれぞれ経営方針や目的があります。
現在の会社の理念や社長の想いが、そのまま受け継がれるとは限りません。
そのため私は、M&Aは決して悪い方法ではありませんが、十分に話し合い、お互いが納得したうえで進めることが大切だと考えています。
第三者承継という新しい可能性
近年注目されているのが、第三者承継です。
地域の同業者や独立を目指す若い技術者などへ会社を引き継ぐ方法です。
- 建設業が好き
- 自分で会社を経営したい
- 地域に貢献したい
そんな志を持つ若い人たちも、実はたくさんいます。
大きなお金が入る承継ではないかもしれません。
しかし、
- 会社が残る
- 社員が働き続けられる
- 地域の技術が残る
これは地域社会にとって、とても価値のある事業承継ではないでしょうか。
私が一番もったいないと思うこと
私は、会社がなくなることよりも、
社長が積み重ねてきた人生そのものが失われることを、一番もったいないと感じています。
- 何十年もの経験
- 数えきれない失敗
- 積み重ねてきた技術
- 仕事の段取り
- 人との信頼
- 地域とのつながり
こうした財産は、お金では買えません。
だからこそ、
- 一人でもいい
- 一つでもいい
未来へ渡してほしいのです。
建設業は地域の財産でもあります
会社は社長のものです。
しかし建設業は、地域全体を支える仕事でもあります。
- 道路
- 橋
- 学校
- 病院
- 住宅
- 災害復旧
私たちの暮らしは、建設業があるから成り立っています。
だから会社を未来へ残すことは、地域の未来を守ることにもつながるのです。
事業承継は「会社を売ること」ではありません
事業承継とは、会社を手放すことではありません。
未来へ想いを託すことです。
- 親族でも
- 社員でも
- 第三者でも
次の世代へ受け継がれるのであれば、それは立派な事業承継です。
一人で悩まず、専門家へ相談してください
事業承継は、一生に一度あるかないかの大きな決断です。
しかも、1年や2年で終わるものではありません。
だからこそ、5年、10年という時間をかけて準備を進めていただきたいと思います。
まずは、
- 家族と話をする
- 会社の未来を考える
- 情報を集める
そんな小さな一歩から始めれば十分です。
そして、一人で抱え込まないでください。
現在は、国や自治体が設置する事業承継支援機関があり、専門家が中立的な立場で相談に応じてくれます。
実際に私も研修会へ参加し、その体制の充実に驚きました。
また、建設業には夢を持った若い人もたくさんいます。
- 「建設業が好き」
- 「いつか独立したい」
- 「地域の役に立ちたい」
そんな若者と、経験豊富な社長を結び付ける役割も、事業承継支援機関にはあります。
一人で悩むより、まず相談する。
それが、未来への第一歩になるかもしれません。
まとめ
「まだまだ元気だから大丈夫。」
「忙しくて考える暇がない。」
そう思っている社長も多いでしょう。
しかし、病気や事故は突然やってきます。
だからこそ、会社の経営と並行して、5年、10年先の未来を考えていただきたいのです。
- 親族がいない
- 後継者がいない
だから終わり。
そう決めるのは、まだ早いかもしれません。
- 社員承継
- 第三者承継
- M&A
会社を未来へつなぐ方法は、今まで以上に広がっています。
そして何より、社長が長年積み重ねてきた経験や技術、人とのつながりは、次の世代へ受け継ぐ価値のある大切な財産です。
事業承継とは、会社を終わらせる準備ではありません。
未来へ想いをつなぐ準備なのです。
建設業専門の行政書士として
建設業界には、夢を持ち、技術を学びたいと考えている若者がいます。
一方で、長年かけて会社を育ててきた社長がいます。
この二人が出会い、想いと技術をつないでいくこと。
私は、その橋渡しができる行政書士になりたいと思っています。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

