はじめに
これまでのシリーズでは、
- 建設業の事業承継がなぜ必要なのか、
- いつから準備を始めるべきか、
- 親族や社員、第三者へ会社を引き継ぐ方法
についてお話ししてきました。
その中で、多くの社長が不安に思われるのが、
「建設業許可はどうなるの?」ということです。
- 「社長が代わると許可はなくなるのでは?」
- 「もう一度最初から申請し直さなければいけないの?」
そんな心配をされる方も少なくありません。
しかし、令和2年の建設業法改正によって、建設業許可を途切れさせずに承継できる制度が整備されました。
私は、この制度は単なる法律改正ではなく、地域の建設会社を守るためにつくられた制度だと感じています。
建設業許可は「会社の営業資格」
建設業許可は、単なる一枚の許可証ではありません。
- 会社が工事を受注し、
- お客様から信頼され、
- 社員が安心して働くための土台
だからこそ、
事業承継では、会社だけでなく、建設業許可も一緒に未来へ引き継ぐ必要があります。
承継認可制度とは?
一言で言えば、建設業許可を途切れさせることなく次の世代へ引き継ぐ制度です。
以前は、社長が交代すると、建設業許可を一度失い、改めて新規申請を行う必要がありました。
その間は、営業活動に大きな支障が出ることもありました。
令和2年の法改正では、この問題を解決するため、承継認可制度が創設されました。
これにより、一定の条件を満たせば、
許可を継続したまま事業承継ができるようになったのです。
承継方法は4つだけ
制度は難しく感じますが、まずは4つだけ覚えていただければ十分です。
- 事業譲渡
- 合併
- 会社分割
- 相続
それぞれ内容は異なりますが、目的は共通しています。
建設業を途切れさせずに未来へつなぐことです。
それぞれの違いを簡単に知っておこう
イメージすると、次のようになります。
| 承継方法 | イメージ |
| 事業譲渡 | 会社の事業を引き継ぐ |
| 合併 | 二つの会社が一つになる |
| 会社分割 | 一部の事業だけを引き継ぐ |
| 相続 | 個人事業を家族が引き継ぐ |
細かな制度は専門家に相談すれば大丈夫です。
まずは、「こんな方法があるんだ」と知ることが大切です。
一番重要なのは申請するタイミング
承継認可制度は、順番がとても重要です。
特に、
事業譲渡・合併・会社分割は、
原則として承継前に認可申請を行います。
一方、
相続は、被相続人が亡くなった日から30日以内に認可申請を行う必要があります。
このタイミングを間違えると、制度を利用できなくなる可能性もあります。
だからこそ、早めの準備が欠かせません。
引き継ぐのは許可だけではありません
事業承継で受け継ぐものは、建設業許可だけではありません。
例えば、
- 建設業者としての地位
- 営業実績
- 経営事項審査(経審)
- 長年築いた信用
- お客様との信頼関係
など、
会社の歴史そのものを未来へつないでいくことになります。
これは、お金では買えない大切な財産です。
行政書士が確認するポイント
建設業許可の承継では、確認しなければならないことが数多くあります。
例えば、
- 個人事業か法人か
- 承継予定日はいつか
- 許可の有効期限
- 専任技術者の状況
- 経営業務管理責任者の要件
- 経営事項審査の状況
- 社会保険への加入状況
などです。
これらを一つずつ整理しながら、無理のないスケジュールを立てていきます。
承継認可制度は順番が命
実務では、次の流れで進めることが基本になります。
一つ順番を間違えるだけでも、予定どおり承継できなくなる場合があります。
制度を知るだけでなく、計画的に進めることが何より重要です。
承継認可はゴールではありません
私は、ここが一番大切だと思っています。
承継認可制度は、建設業許可を残す制度です。
しかし、
会社を残す制度ではありません。
会社を育てるのは、人です。
- 社員が安心して働ける会社にすること。
- 若い人が夢を持って働ける会社にすること。
- 地域から必要とされ続ける会社にすること。
そのためのスタートラインが、承継認可制度なのです。
行政書士だからこそできる役割
M&Aや事業承継には、税理士、司法書士、金融機関など、多くの専門家が関わります。
その中で、行政書士が担う役割は、
建設業許可を維持しながら事業承継を実現することです。
建設会社ならではの制度を理解し、許可が途切れないようサポートすること。
それが、建設業に関わる行政書士の大切な役割だと考えています。
まとめ
- 「まだまだ元気だから大丈夫。」
- 「忙しくて考える暇がない。」
- 「息子は継がないから、うちの会社は俺の代で終わり。」
そんな言葉を、私は建設会社の社長から何度も聞いてきました。
しかし、建設業は、お金を稼ぐためだけの仕事ではありません。
- 地域の暮らしを支え、
- 災害時には真っ先に必要とされる、
- 社会に欠かすことのできない仕事。
だからこそ、長年積み重ねてきた技術や経験、そして建設業許可を次の世代へつないでいくことには、大きな意味があります。
私は、承継認可を単なる「申請代行」とは考えていません。
相談の入り口は建設業許可かもしれません。
しかし、本当の目的は、
- 会社がこれからも地域で必要とされ続けること。
- 社員が安心して働き続けられること。
- 建設業の技術と想いを未来へつないでいくことです。
そのために、社長と一緒に考え、一緒に歩んでいける行政書士でありたいと思っています。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

