はじめに
これまでのシリーズでは、
- 事業承継を早めに考えること
- 後継者を育てること
- 会社を未来へ残すこと
の大切さについてお伝えしてきました。
しかし、
「事業承継が大切なのは分かった。でも、何から始めればいいの?」
そう思われる社長も多いのではないでしょうか。
そこで必要になるのが事業承継計画です。
難しい言葉に聞こえますが、私はもっとシンプルに考えています。
社長が描く『会社の未来予想図』を書き出すこと。
それが事業承継計画だと思っています。
建設業では、建設業許可の承継制度を利用することで、親から子への事業承継や会社の譲渡なども計画的に進めることができます。
そのためにも、事業承継計画を早い段階から考えることが大切です。
事業承継計画とは「未来への設計図」
「計画」と聞くと、何十ページもある分厚い資料を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、小さな建設会社ではそんな難しいものは必要ありません。
私は、社長が頭の中で考えていることを、一つひとつ紙に書き出して整理することから始めれば十分だと思います。
例えば、
- いつ頃社長を交代したいのか
- 誰に引き継ぎたいのか
- その人に何を教えたいのか
- 会社をどんな会社として残したいのか
こうした想いを書き出すだけでも、立派な事業承継計画の第一歩になります。
事業承継計画は「社長の想い」を形にするもの
事業承継計画の作成や事業承継について相談する相手としては、税理士や中小企業診断士、弁護士などの専門家がよく挙げられます。
確かに、財務内容や税金、相続対策、法律上の手続きについては、それぞれの専門家の知識が欠かせません。安心して相談できる大切な存在です。
しかし、私はもう一つ、とても大切なことがあると考えています。
それは、社長自身の想いです。
- 会社をどんな形で未来へ残したいか?
- 社員にどんな会社で働き続けてほしいか?
- お客様との信頼をどう引き継ぎたいか?
- 地域に対して、これからもどのように貢献していきたいか?
- 長年積み重ねてきた建設業の技術や経験を、誰に、どのように伝えていきたいか?
こうした想いは、数字や決算書だけでは見えてきません。
だからこそ、事業承継計画は専門家だけが作るものではなく、社長の想いを中心に、ご家族や社員、そして必要に応じて専門家の知恵を集めながら、一緒に育てていくものだと思います。
私は、建設業の現場で三十年以上働き、多くの建設会社の社長と接してきました。
現場で汗を流し、お客様との信頼を積み重ね、社員を育て、地域を支えてきた社長だからこそ語れることがあります。
その想いこそが、事業承継計画の土台になるのではないでしょうか。
専門家の知識と、社長の経験や想い。
その両方が重なったとき、本当に意味のある事業承継計画が完成すると私は考えています。
事業承継計画で最初に考える4つのこと
私はまず、この4つだけ考えれば十分だと思っています。
① 何を引き継ぐのか
- 建設業許可
- 技術
- お客様との信頼
- 社員
- 仕事の進め方
- 地域とのつながり
会社には目に見える財産だけではなく、目に見えない財産もたくさんあります。
② 誰に引き継ぐのか
親から子への事業承継を考える社長もいれば、長年一緒に働いてきた社員へ引き継ぐ会社もあります。
また最近では、会社や事業を譲渡する形で建設業許可を承継するケースも増えてきました。
それぞれ準備する内容が異なるため、早い段階から方向性を決めておくことが大切です。
- 息子や娘
- 社員
- 第三者
- M&A
方法は一つではありません。
「誰なら会社を任せられるか」
その視点で考えることが大切です。
③ いつ引き継ぐのか
「まだ元気だから大丈夫。」
多くの社長がそう言われます。
しかし、病気や事故は突然やってきます。
だからこそ、
5年後、10年後を見据えて、少しずつ準備を始めることが大切です。
④ 何から始めるのか
例えば、
- お客様の一覧表を作る
- 取引先を整理する
- 銀行との契約内容をまとめる
- 建設業許可の更新時期を確認する
- 技術やノウハウを書き残す
一つずつ進めれば十分です。
事業承継には時間が必要な理由
私は、事業承継で一番大切なのは「時間」だと思っています。
建設業は、資格だけあればできる仕事ではありません。
現場では、
- 段取り
- 職人との付き合い方
- 材料の選び方
- 天候への対応
- お客様との信頼関係
など、本では学べない経験が数え切れないほどあります。
だから、後継者が決まったとしても、
- 一緒に働き、
- 一緒に悩み、
- 一緒に失敗しながら育っていく
時間が必要なのです。
事業承継計画は「遺言書」に少し似ている
私は最近、事業承継計画は少し遺言書に似ていると感じています。
もちろん、法的な意味はまったく違います。
しかし、
どちらも
「自分の想いを未来へ残す」
という点では共通しています。
一度作れば終わりではありません。
会社の状況や家族の環境は変わります。
そのたびに、
見直し、
書き直し、
より良い計画へ育てていけばいいのです。
完璧な計画を最初から作る必要はありません。
社員の将来も考えることが社長の責任
事業承継は、
社長だけの問題ではありません。
- 社員にも家族がいます。
- 住宅ローンを抱えている人もいます。
- 子どもを育てている人もいます。
もし突然会社がなくなれば、
多くの人の生活に影響します。
だからこそ、
社員の将来を守るためにも、
早めに事業承継を考えることは、
経営者として大切な責任の一つではないでしょうか。
建設業の技術を残すことは社会貢献
私は、建設業の事業承継は、単に会社を残すことではないと思っています。
建設業は、
- 道路をつくり、
- 住宅を建て、
- 災害復旧を行い、
- 地域の暮らしを支える仕事です。
長年培われた技術や経験は、地域にとっても大切な財産です。
それを次の世代へつないでいくことは、大きな社会貢献につながると感じています。
事業承継計画は一人で作るものではない
社長一人で悩む必要はありません。
- 奥様、
- ご家族、
- 後継者、
- 社員、
そして、
事業承継・引継ぎ支援センターや行政書士などの専門家。
多くの人の力を借りながら、少しずつ形にしていけばいいのです。
大切なのは、「まだ早い」と思わずに、今日から考え始めることです。
事業承継では、建設業許可の承継制度だけでなく、補助金制度や支援制度を活用できる場合もあります。
事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関では、事業承継計画の作成から実行まで相談できますので、一人で悩まず活用していただきたいと思います。
まとめ
事業承継計画とは、会社を終わらせるための計画ではありません。
会社を未来へつなぐための設計図です。
- 何を残したいか
- 誰に託したいか
- いつ始めるか
社長の頭の中にある想いを、一つずつ形にしていくことが、事業承継計画の本当の目的だと私は考えています。
建設会社は、長い年月をかけて築き上げた信頼と技術、そして地域とのつながりによって成り立っています。
それらは、お金では買うことのできない大切な財産です。
だからこそ、事業承継は時間をかけて計画的に進めてほしい。
私は、事業承継計画とは「未来への約束」を書き残すことだと思っています。
建設業許可の承継制度を利用するためにも、事業承継計画は早めに準備しておくことが大切です。
- 親から子への承継
- 社員承継
- 第三者承継など、
会社ごとに最適な方法は異なります。
社長の想いを形にした事業承継計画が、会社の未来を支える土台になるのです。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

