はじめに
建設会社の社長とお話をしていると、
「できれば息子に会社を継いでもらいたい。」
そんな言葉をよく耳にします。
- 長年かけて築いてきた会社
- 苦労しながら守ってきた社員
- 地域のお客様との信頼
それらを一番近くで見てきた息子に引き継ぎたいと思うのは、ごく自然なことです。
しかし現実には、親族内承継は決して簡単ではありません。
今回、事業承継の研修会に参加して改めて感じたことがあります。
それは、『事業承継とは会社を引き継ぐことではなく、人を育てることなのだ』ということでした。
社長は継がせたい。では、息子はどう思っているのでしょうか?
社長は、「いつかは会社を継いでくれるだろう!」
そんな期待を抱いていることがあります。
しかし、息子さんはどうでしょう。
- 建設業が好きなのか
- 会社を継ぎたいと思っているのか
- 家族はどう考えているのか
今の時代、働き方も価値観も昔とは大きく変わりました。
都会で会社員として働き、家を建て、子どもを育てている。
そんな状況で「会社を継いでほしい」と言われても、すぐに答えを出せるものではありません。
- 親子だからこそ、本音を言えない
- 甘えがあるからこそ、強い言葉になってしまう
- 素直になれない
私は、親族内承継で一番難しいのは、手続きではなく「親子の会話」なのではないかと思っています。
現場で一人前になることと、社長になることは違います
嬉しいことに息子さんが会社へ入ってくれたとします。
一生懸命仕事を覚え、現場でも頼れる存在になってきた。
ここまで育っただけでも、私は素晴らしいことだと思います。
建設業界で働いてくれる人が一人増えた。
それだけで技術は次の世代へ受け継がれていきます。
しかし、現場で仕事ができることと、会社を経営することはまったく別の話です。
社長になると、
- 資金繰り
- 銀行との交渉
- 営業
- 社員採用
- 建設業許可などの手続き
- 税金や保険
- 経営判断
など、多くの責任を背負うことになります。
現場では一人前でも、経営者として育つには、さらに長い時間が必要なのです。
社長になる覚悟は、一緒に育んでいくもの
「来年から社長を頼む。」
そう言われても、覚悟は生まれません。
- 会社を守る責任
- 社員とその家族を守る責任
- お客様からの信頼を守る責任
これらは、一緒に働き、一緒に悩み、一緒に失敗しながら育っていくものです。
私は、事業承継は、
「教える」のではなく、「一緒に育む」ものだと思っています。
息子には息子の考え方があります。
新しい時代の経営があります。
社長と同じやり方が正解とは限りません。
だからこそ、
- 見守り
- 必要な時だけ手を差し伸べ
- 相談されたら静かに答える
そんな距離感が、親族内承継には大切なのではないでしょうか。
実は、一番の理解者は社長の奥様かもしれません
建設会社を見ていると、とても印象的な場面があります。
社長には反論する息子さんが、お母さんの言葉には素直に耳を傾ける。
そんな光景を何度も見てきました。
社長と息子の間に入り、お互いの気持ちをやわらかく伝える。
社長の奥様が、そんな存在になっている会社は少なくありません。
また、仕事の流れや会社のお金のことを奥様も理解している会社ほど、事業承継がスムーズに進む印象があります。
- 社長にとっても
- 息子さんにとっても
- お客様にとっても
- そして会社にとっても
奥様の存在はとても大きな支えなのです。
だから私は、事業承継は「社長と息子」だけの問題ではなく、
家族みんなで進めるものだと思っています。
社長の背中を見て、子どもは育ちます
建設業の社長は、
- 頑固で
- 負けず嫌いで
- 口下手
そんな方も少なくありません。
それは苦労を乗り越えてきた証でもあります。
一方で、
「こんな苦労を息子にはさせたくない。」
そんな本音も持っています。
でも私は思うのです。
社長が毎日、
「仕事は大変だけど楽しい。」
「建設業は誇れる仕事だ。」
そんな姿を見せ続けていたら、息子さんはきっと感じます。
「親父、かっこいいな。」
「いつか追い越したいな。」
子どもは、言葉よりも親の背中を見ています。
建設業は、誇れる仕事です
建設業は決して楽な仕事ではありません。
- 暑さもあります
- 寒さもあります
- 体力も必要です
- ケガをするリスクも高い
- 繁忙期と閑散期が激しい
それでも、
- 地図に残る仕事です
- 人の暮らしを守る仕事です
- 災害の時には真っ先に必要とされる仕事です
- AIやロボットだけでは代わることのできない仕事です
そして、
お客様から「ありがとう」と言われる仕事です。
私は、この仕事の魅力をもっと若い世代へ伝えていきたい。
社長にも、
息子さんにも、
「建設業って、いい仕事だ。」
そう胸を張って言ってほしいと思っています。
まとめ
親族内承継には正解がありません。
- 家庭によって事情も違います
- 会社の規模も違います
- 親子の関係も違います
だからこそ、
一番大切なのは、
社長自身が、
- 「これから会社をどうしたいのか」
- 「誰に、何を残したいのか」
を考えることではないでしょうか。
会社を引き継ぐことが事業承継ではありません。
社長が長い年月をかけて築いてきた、
- 技術
- 経験
- 信頼
- そして仕事への誇り
を、次の世代へつないでいくこと。
私は、それこそが本当の事業承継だと思っています。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

