はじめに
前回の記事では、建設業の後継者不在率が57.3%という現実についてお伝えしました。
建設業の事業承継は、単に会社を残すためではありません。
長年かけて培ってきた技術や経験、人とのつながりを未来へ引き継ぐために必要なことです。
では、事業承継はいつ頃から考え始めれば良いのでしょうか。
私は建設業界で長く働いてきた経験から、「思った時が始め時」だと感じています。
特に50代の社長には、ぜひ一度考えていただきたいテーマです。
まだ元気な50代だからこそ考えてほしい
50代の社長は、会社としても最も勢いがある時期かもしれません。
- まだまだ現役
- 体力もある
- 経験もある
そして、
- 会社をもっと大きくしたい
- 新しい仕事にも挑戦したい
- 若い人を育てたい
そんな夢を持って仕事をされている方も多いでしょう。
だからこそ、少しだけ未来のことも考えてみてほしいのです。
例えば、
- 「息子が興味を持ったら継がせたい」
- 「若い社員が育ったら任せたい」
- 「自分の技術や経験を残したい」
そんな想いを持つだけでも、会社の見え方は大きく変わってきます。
事業承継とは、引退準備ではありません。
会社の未来づくりだと思うのです。
60歳からでは遅いと言われる理由
事業承継は書類を書けば終わるものではありません。
- 後継者を決める
- 育てる
- 取引先に認めてもらう
- 銀行との関係を引き継ぐ
- 建設業許可の承継準備を行う
これらには時間がかかります。
特に建設業の場合は、社長が持っている経験や勘、人脈が非常に大きな財産になっています。
- 現場の段取り
- 職人との付き合い方
- 見積りの感覚
- 顧客との信頼関係
- 外注先とのつながり
これらは数か月では引き継げません。
- 一緒に働き
- 一緒に悩み
- 一緒に経験して
ようやく少しずつ受け継がれていくものです。
そう考えると、60歳を過ぎてから考えるより、
50代から少しずつ準備を始める方が理想的ではないでしょうか。
後継者はすぐには育たない
建設会社の社長とお話しすると、
- 「息子が会社で働いているから大丈夫」
- 「後継者はいるから安心」
という言葉を聞くことがあります。
確かに、息子さんや若い社員さんが会社で働いてくれていることは、とても心強いことです。
しかし、
現場の仕事ができることと、会社の経営を任されることは全く別の話です。
社長の仕事は現場だけではありません。
例えば、
- 資金繰りを考える
- 銀行と交渉する
- 人材を採用する
- お客様との信頼関係を築く
- 営業活動を行う
- 会社の将来を判断する
など、多くの役割があります。
私自身、建設業界で長く働いてきましたが、現場の管理と経営者の仕事はまったく違うものだと感じています。
現場では優秀な職人や監督であっても、経営者として必要な知識や経験は別に身につけていかなければなりません。
また、社長は
「将来は息子に継いでほしい」と思っていても、息子さん自身はまだその気持ちになっていない場合もあります。
若い世代には若い世代の人生があります。
会社を継ぐという決断は簡単なものではありません。
だからこそ、後継者には早い段階から少しずつ経営に関わってもらい、
- 一緒に考え
- 一緒に悩み
- 一緒に経験を積む
ことが大切だと思います。
事業承継は書類を引き継げば終わるものではありません。
会社を支えてきた考え方や価値観、人とのつながりまで受け継いでこそ、本当の意味での事業承継になるのではないでしょうか。
そのためにも、後継者育成には5年、10年という時間が必要なのです。
社長の健康問題は会社のリスクでもある
建設業では、社長自身が現場に出ている会社も少なくありません。
職人として働きながら、
- 営業も行い
- 見積りも作り
- 資金繰りも考える
そんな社長も多いでしょう。
しかし、
- もし社長が病気になったらどうでしょうか
- もし事故に遭ったらどうでしょうか
- もし突然働けなくなったらどうでしょうか
会社が止まってしまう可能性があります。
実際に、交通事故や病気は誰にでも起こり得ます。
災害もあります。
だからこそ、事業承継は引退のためだけではなく、万が一に備える経営上のリスク対策でもあるのです。
今からでもできる小さな準備
事業承継は難しく考える必要はありません。
まずは、社長しか分からないことを整理することから始めてみてください。
例えば、
- 顧客情報の整理
- 取引先や外注先の連絡先一覧
- 銀行との取引内容
- 借入金の状況
- 工事の進捗管理
- 許可や資格の管理
- 技術的なノウハウの記録
こうした小さな積み重ねが、将来の事業承継につながります。
後継者がいないからと諦めないでほしい
- 「息子は都会で会社員をしている」
- 「継いでくれる社員がいない」
- 「もう年だから無理だろう」
そんな声もよく聞きます。
しかし、今は親族承継だけが事業承継ではありません。
従業員承継という方法もあります。
第三者承継やM&Aという選択肢もあります。
広島県事業承継・引継ぎ支援センターのような支援機関もあります。
大切なのは、諦める前に一度考えてみることです。
社長が何十年もかけて築き上げたものは、決して簡単に作れるものではありません。
だからこそ、次の世代へつなぐ方法を探してほしいと思います。
まとめ
私は建設業界で長く働いてきました。
だからこそ分かります。
- 建設業で会社を続けること
- 家族を養うこと
- お客様との信頼関係を築くこと
それは決して簡単なことではありません。
何十年もの経験と努力の積み重ねがあって初めてできることです。
だから私は、その経験や技術、人とのつながりを絶やしてほしくないのです。
事業承継は、会社を引き継ぐことだけではありません。
社長が人生をかけて築き上げてきた財産を未来へつなぐことです。
もし今、「何から始めれば良いのか分からない」
そう感じているなら、まずは5年後、10年後の会社の姿を考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

