はじめに
私は55歳で会社を退職しました。
退職したからこそ分かることがあります。
それは、独立に必要だったのは、勢いだけではなく「準備」だったということです。
もし今の私が50歳に戻れるなら、会社を辞める前の5年間をもっと大切に使います。
今の時代は、思い立ったらすぐ行動、スピードが大切と言われます。
もちろん行動力は大事です。
しかし、だからといって「すぐに会社を辞めて独立だ」と考えるのは、少し危険。
50代からの独立には、家族、生活費、健康、人間関係、これまでの経験の活かし方など、考えるべきことがたくさんあります。
だからこそ、これから独立を考える方には、3〜5年かけて少しずつ準備を進めてほしいと思います。
独立前に考えたいミッションとビジョン
独立準備で一番大切なのは、「どんな仕事をするか」よりも、「なぜ独立したいのか」を考えることです。
私はこれを、ミッションとビジョンだと考えています。
ミッションとは、「何のために働くのか」という自分の軸です。
難しく考える必要はありません。
例えば、
- 地域の人の役に立ちたい
- 建設業界に恩返しをしたい
- 若い人に技術を伝えたい
- 家族との時間を大切にしたい
これらも立派なミッションです。
一方、ビジョンとは、その想いをどんな形で実現していくのかです。
- 一人親方として働く
- 小さな工務店を経営する
- 技術指導を行う
- 専門資格を活かして独立する
など、実現方法は人によって違います。
最初から完璧に決まっている必要はありません。
私自身も今なお、ミッションとビジョンを見直し続けています。
ただ、自分なりの軸がある人は、苦しい時にも踏ん張ることができます。
だから私は、独立準備の最初に考えるべきことの一つだと思っています。
まずはお金の準備
独立すると、毎月決まった給料はなくなります。
今まで当たり前だった賞与もありません。
もしかすると、仕事を受注できず、しばらく収入が安定しない時期もあるかもしれません。
種をまいて、実がなるまでには時間がかかります。
だからまず必要なのは、生活費の見直しと貯蓄です。
ただし、何千万円も必要という話ではありません。
無駄な支出を減らし、少しずつ蓄えていく。
それだけでも大きな安心材料になります。
私は、借金して独立することを否定するつもりはありません。
しかし50代からの独立は、20代や30代の起業とは違います。
- 家族もいる
- 住宅ローンもある
- 親の介護もあるかもしれない
だから私は、まずは借金を前提にしない独立を考えてほしいと思っています。
独立後の不安の多くは、お金に関することです。
だからこそ、お金の準備と生活の見直しは最優先だと思います。
人間関係を切らない
独立した後に、仕事を紹介してくれるのは誰でしょうか。
新しく出会った人も大切ですが、実際には今まで関わってきた人たちが力になってくれることが多いです。
- 会社の上司
- 同僚
- 取引先
- 協力会社
私は会社を辞めた今だからこそ思います。
本当に財産だったのは、資格でも肩書でもなく、一緒に仕事をしてきた人たちとの縁でした。
だから独立するからといって、人間関係を切ってはいけません。
むしろ今まで以上に大切にするべきです。
現在では、正社員から業務委託という形で、個人事業主的に働ける会社も増えています。
定年後の嘱託勤務も、見方を変えれば1年契約の働き方とも言えます。
収入を得ながら、人間関係を継続し、少しずつ独立準備を進める。
そんな働き方も十分ありだと思います。
もしかすると、今は苦手に感じている上司も、将来のお客様になるかもしれません。
そう考えると、今の人間関係の見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。
名刺・SNS・地域とのつながりを作る
会社員のうちは会社の看板があります。
しかし独立すると、その看板はなくなります。
だからこそ、自分自身を知ってもらう準備が必要。
- 名刺を作る
- SNSを始める
- 地域の行事に参加する
小さなことで構いません。
独立後に突然営業を始めるのではなく、会社員のうちから少しずつ地域との接点を増やしておきましょう。
例えば、
- Facebookを始める
- 地域の清掃活動に参加する
- 商工会や異業種交流会に参加する
- 興味のあるセミナーに参加する
- 趣味のサークルに入る
- 知り合いの会社で仕事を体験させてもらう
など、会社以外の場所に自分の居場所を作ることも大切。
会社員時代の付き合いは、どうしても会社内や仕事関係者に偏りがちです。
しかし、会社の外に出て人と関わることで、自分の新しい一面に気づくこともあります。
独立準備とは、外とのつながりを作る準備でもあります。
資格や知識を磨く
建設業界は常に変化しています。
- 法改正
- 新しい技術や商品
独立後は、誰も「勉強しなさい」とは言ってくれません。
だからこそ、自分から学ぶ習慣が必要。
- 資格取得
- セミナー・講習会に参加
- 本を読む
学ぶことで、自分が本当にその仕事を好きになれるかどうかの判断材料にもなります。
また、セミナーや勉強会では、同じ方向に興味を持つ人と出会うこともあります。
お互いに励まし合い、将来の良い関係につながるかもしれません。
少し難しい資格であれば、取得までに1〜2年かかることも珍しくありません。
だからこそ、会社員のうちに時間を作って学び始めることが大切です。
独立後の働き方を決める
独立したいと思っている人の中には、「独立すること」そのものが目的になっている人もいます。
しかし本当に大切なのは、独立後にどんな人生を送りたいかです。
- 一人親方として働く
- 小さな工務店を作る
- 技術指導をする
- コンサルタントになる
目指す姿によって、準備する内容は変わります。
すぐに一つに決める必要はありません。
むしろ、会社員のうちにいろいろ試すことが大切です。
仕事の体験、学習、人との出会いを通じて、自分に合った働き方が少しずつ見えてくるかもしれません。
焦って「これしかない」と決めてしまうと、他の可能性が見えなくなることもあります。
試行錯誤できるのは、会社員のうちだからこそできる大きなメリットです。
3〜5年かけて少しずつ前進する
私は、独立を急ぐ必要はないと思っています。
会社員として働きながらでも、準備できることはたくさんあります。
- 本を読む
- 人に会う
- 資格を取る
- お金を貯める
- 地域とのつながりを作る
- 他部署の仕事を知る
そんな小さな積み重ねが、将来の独立につながります。
会社員として働いている時は、社内の多くの部署の人から知識や経験を聞くことができます。
これは独立後にはなかなかできません。
場合によっては、他部署の業務を手伝うことで、新しい経験が得られるかもしれません。
自分の経験値を増やし、
- 専門性
- 強み
- 弱み
- 人間関係
を書き出してみることもおすすめです。
自分を知ることで、どのような働き方が自分の生きがいになるのかも見えてきます。
独立は、ある日突然成功するものではありません。
会社員時代の3〜5年間の積み重ねが、独立後の未来を大きく左右します。
独立準備とは、会社を辞める準備ではありません。
自分らしい人生を作る準備です。
まとめ
50代からの独立は決して遅くありません。
むしろ30年以上積み重ねてきた経験や人脈を活かせる、絶好のタイミングとも言えます。
しかし、勢いだけの独立は危険です。
会社が嫌だから辞める。
給料が安いから辞める。
そんな理由だけで独立することはおすすめしません。
私はむしろ、会社員でいる時間こそ独立準備の黄金期間だと思っています。
給料をもらいながら、
- 経験を積める
- 人脈を作れる
- 資格を取れる
- 失敗しても生活は守られる
これほど恵まれた環境はありません。
だからこそ、焦る必要はありません。
まずは3〜5年。
少しずつ準備を進めてみてください。
「辞めてから考える」のではなく、「働きながら準備する」。
その積み重ねが、人生後半の選択肢を広げてくれます。
50代、60代からでも、自分らしい第二の人生は作れます。
そのための小さな一歩を、今日から始めてみませんか。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

