はじめに
ここ数年、建設会社の廃業が増えています。
- 後継者がいない。
- 年齢的に体力が続かない。
- 仕事が減ってきた。
- 「こんな苦労の多い仕事を子どもには継がせたくない。」
そんな理由から、会社を閉じる決断をされる社長も少なくありません。
もちろん、廃業という決断が間違っているわけではありません。
それぞれの会社には、それぞれの事情があります。
しかし私は、建設業に長く携わってきた一人として、
「廃業する前に、もう一つだけ考えてほしいこと」があります。
それは、会社を未来へ残すという選択肢です。
社長が築いてきた会社は、一人のものではない
建設会社を経営している社長は、これまで本当に多くの苦労を乗り越えてこられたと思います。
- 資金繰りに悩み、
- 利益が思うように出ず、
- 職人が足りずに朝早くから夜遅くまで現場へ向かう。
- お客様から厳しい言葉をいただいたこともあったでしょう。
- 請負金額の中で利益を出す難しさ。
- 景気の波。
- 社員の生活。
- 家族への責任。
社長には、人には見えない苦労の積み重ねがあります。
だからこそ、
「もう十分頑張った。」
そう思われる気持ちもよく分かります。
しかし、会社は社長一人だけで育ててきたものではありません。
そこには、
- 支え続けてくれた家族
- 苦楽を共にした社員
- 協力会社の仲間
- 長年仕事を任せてくださったお客様
- 地域の皆さん
多くの人の支えがありました。
会社には、社長の人生だけでなく、
多くの人の人生も詰まっています。
そして会社は、技術や知識だけではありません。
- 社員へ給与を支え、
- 家族に安心を届け、
- 地域に仕事を生み、
- 多くの人の幸せを育ててきました。
ここまで続けてこられたこと自体が、大きな社会貢献なのです。
廃業は地域にも大きな影響を与える
建設会社が一社なくなる。
その影響は、会社の中だけでは終わりません。
例えば、
- 災害が起きたときの復旧
- 道路や住宅の修繕
- 空き家の補修
- 地域インフラの維持
こうした仕事を担う人が一人、また一人と減っていきます。
これからは高齢化が進みます。
高齢になると、
「ドアが壊れた。」
「手すりを付けたい。」
「段差をなくしたい。」
「網戸を張り替えてほしい。」
そんな小さな困りごとでも、自分ではできなくなります。
その時に頼れるのは、地域に根付いた建設会社です。
小さな建設会社ほど、地域では大きな存在なのです。
社員の未来を守るという責任
社員は、
- 社長を信じて働いてきました。
- 社員にも家族がいます。
- 住宅ローンを抱えている人もいます。
- 子どもを育てている人もいます。
- 地元が好きだから。
- 会社が好きだから。
- 仲間が好きだから。
そして、社長を信頼しているから。
だから苦しい時も一緒に頑張ってきたのです。
社長が会社の未来を考えることは、社員の生活を守ることにもつながります。
それもまた、経営者としての大切な責任ではないでしょうか。
お客様との信頼は会社の財産
建設業は、「この会社だから。」ではなく、
「この社長だからお願いしたい。」
そんな仕事がたくさんあります。
信頼は、一日で築けるものではありません。
何十年も積み重ねてきた財産です。
しかし、信頼は失う時は一瞬。
価格が安いだけでは、仕事は続きません。
後継者が決まったら、お客様へ紹介し、一緒に現場へ行き、少しずつ信頼を引き継いでほしいと思います。
後継者も不安です。
仕事ができても、経営ができるとは限りません。
- 相談に乗る。
- 話を聞く。
- そっと背中を押す。
- 「何かあれば相談しろ。」
そう言ってくれる存在がいるだけで、人は安心できます。
その成長を見守る時間も、社長だから味わえる幸せではないでしょうか。
会社を残す方法は一つではない
事業承継には、
- 息子や娘への承継
- 社員承継
- 第三者承継
- M&A
- 建設業許可の承継認可制度
など、さまざまな方法があります。
「廃業する」
「続ける」
その二つだけではありません。
その間には、多くの選択肢があります。
そして現在は、事業承継・引継ぎ支援センターなど、
相談できる公的な窓口も充実しています。
だからこそ、少しでも早く未来について考え始めることが大切なのです。
私は「会社を残す努力」をしてほしい
私は、無理に会社を続けてほしいとは思いません。
しかし、
何十年も積み重ねてきた
- 技術
- 信頼
- 人
- 地域とのつながり
これらがすべて失われてしまうことは、本当にもったいないと感じています。
だから、廃業を決断する前に、
「残す方法は本当にないのだろうか。」
一度だけ考えてみていただきたいのです。
建設会社が一社残ることは地域の未来につながる
建設会社は、利益を上げるためだけの存在ではありません。
- 地域を守り、
- 暮らしを支え、
- 災害時には真っ先に動く。
そんな社会に欠かせない存在です。
さらに地方では、建設会社が若い人の働く場所になります。
一人の若者が、
- 地元を離れず、
- 家族を持ち、
- 地域で暮らしていく。
そのこと自体が、地域にとって大きな財産です。
だから私は、建設会社が一社残ることは、
地域の未来を残すことでもあると思っています。
まとめ
私は、事業承継とは、会社を延命するためのものではなく、
地域へ技術と想いを残すためのものだと思っています。
もし、
「もう廃業しようかな。」
そう考えたときには、どうか一度だけ立ち止まってください。
会社には、決算書には載らない財産があります。
- 社員。
- お客様。
- 地域との信頼。
- 長年積み重ねてきた技術。
社長自身が歩んできた人生です。
その大切な財産を、未来へつないでいく方法は、本当にないのでしょうか。
廃業を決める前に、「会社を残す」という選択肢について考えてみてください。
それが、未来の地域や建設業界への、最後の贈り物になるかもしれません。
そして私は、会社を残すこととは、建物を残すことではなく、人の暮らしと地域の未来を残すことだと信じています。

ながつき行政書士事務所
江郷 晴彦
えごう はるひこ
広島県江田島市の行政書士事務所。 建設業許可や一人親方の手続き、建設業の経営サポートを中心に対応しています。 建設業許可や一人親方の手続きに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

